茨城大学 高エネルギー宇宙物理グループ 本文へジャンプ
      
研究紹介        2011年度〜

観測分野

 私達は、ガンマ線で宇宙を観測して高エネルギーの天体現象を研究しています。ガンマ線は最もエネルギーの高い光(電磁波)です。太陽の光を可視光と言いますが、ガンマ線1個は可視光1個の100万倍以上のエネルギーを持っています。そのようなエネルギーの高い光は、宇宙線という宇宙空間を飛び回る高エネルギーの粒子から放射されます。その粒子のエネルギーは、巨大な人口加速器を用いて人類が作り出すことのできる最高のエネルギーを持つ粒子に匹敵するか、あるいはそれ以上です。従って、宇宙からガンマ線が到来するということは、宇宙では巨大加速器と同様のプロセスが何かしらの物理法則のもとにはたらいているということを意味します。そのプロセスを引き起こしている天体は、超新星爆発(星が進化の最後に起こす大爆発)であったり、巨大ブラックホールであったりしますが、プロセスの詳細はまだよく分かっていません。ガンマ線の観測は、衛星、あるいは地上の望遠鏡を用いて昔から行われてきましたが、本格的な結果が出始めたのは2000年に入ってからであり、非常に新しい研究分野です。特に、2008年にNASAによりフェルミというガンマ線衛星が打ち上げられ、現在非常にエキサイティングな成果が出始めています。私達は現在、フェルミ衛星を用いて宇宙線の研究をすると共に、次世代の国際共同研究による超高エネルギーガンマ線天文台であるCTAで用いる検出器の開発を進めています。以下に、フェルミ衛星、CTAについて簡単に説明します。

フェルミ衛星

フェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡


 フェルミ・ガンマ線望遠鏡は日米欧の国際協力により開発されたガンマ線天文衛星です。 2008年に打ち上げられて以降、高エネルギーガンマ線の波長領域(20MeV〜300GeV *)で全天サーベイ観測を続けています。 この衛星には、大面積ガンマ線望遠鏡(LAT)と呼ばれる主観測装置と副装置であるバースト監視装置(GBM)が搭載されています。 その結果、これまでに、パルサー・活動銀河核・ガンマ線バースト・超新星残骸等からのガンマ線を検出し、宇宙の高エネルギー現象を理解するのに重要な観測成果を上げています。 日本グループは、LATチームに参加し、広島大学、ISAS/JAXA、東京工業大学、早稲田大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、そして我々茨城大学に所属する研究者と、 日本の研究機関からスタンフォード大学に移り教職員として活躍している研究者が緊密に協力し、データ解析、バースト監視や望遠鏡の較正などに活躍しています。 最近の成果やプレス・リリース等、詳しくは、 日本フェルミ衛星グループのホームページを参照してください。 茨城大学では、超新星残骸や活動銀河核等の大規模な粒子加速が行われている天体を中心に研究を続けています。 また、より多くの情報を天体から引き出すために、赤外線・電波グループとも連携して研究を進めています。

 * 1MeV = 1メガエレクトロンボルト = 100万電子ボルト、1GeV = 1ギガエレクトロンボルト = 10億電子ボルト

CTA (Cherenkov Telescope Array)

次世代超高エネルギーガンマ線天文台CTA (Cherenkov Telescope Array)

 CTA計画は、100台近くの解像型大気チェレンコフ望遠鏡を3-10 km2の領域に敷き詰めた大規模な超高エネルギーガンマ線(TeVガンマ線*)天文台を建設し、現在の望遠鏡の10倍深い感度を達成し、エネルギー領域を数10 GeVから100 TeV領域(現在稼働中のものは約100 GeV から約10 TeV)までカバーすること(図を参照)を目指す国際共同実験です。現在、銀河系内外に100以上のTeVガンマ線源が発見されていますが、CTAが実現すれば、1000を超える天体が期待できます。また、単に天体数だけでなく、CTA から得られる科学的成果は銀河系内外の様々な高エネルギー天体、宇宙線、可視赤外宇宙背景放射と銀河形成進化、さらには暗黒物質や量子重力理論の検証などの基礎物理にいたるまで、十分に期待されます(詳細はCTA-Japan Web Page)。現在、本格的な建設を始める前の試作望遠鏡の開発・建設が急ピッチで進んでいます。その開発を元に、2015年頃から本格的な建設が始まり、2020年から、すべての望遠鏡によるフル観測を行う予定です。日本チームでは、大型鏡を持つMAGIC望遠鏡の開発に携わった日本人メンバーの経験を生かして、CTAの大型望遠鏡の開発を集中的に進めています。茨城大学では、その中でも望遠鏡焦点面に用いる光検出器およびその後段に取り付けられるエレクトロニクスの開発、反射鏡を構成する分割鏡の開発等を中心に研究を進めています。

 * 1GeV = 1ギガエレクトロンボルト = 10億電子ボルト、1MeV = 1テラエレクトロンボルト = 1兆電子ボルト


理論分野

理論
 フェルミ衛星等による詳細な観測が進むにつれて、観測から高エネルギー天体の詳細な理論モデルを検証することが可能になってきています。それに伴い、単純な描像ではなく、より現実的な物理状態を仮定した理論モデルによる精密な数値計算が必要になってきます。茨城大学では、そのような理論的な研究も進めています。